1型糖尿病のこどもと家族の生活
15. 災害にそなえよう
大震災の時、インスリンはどうなるの?
2011年3月11日の東日本大震災では、震災のすぐ後から、国や糖尿病に関係する学会、薬の会社など様々なひとが協力して、被災地にインスリンを届けていました。
1型糖尿病の患者さんのうち、インスリンが足りなくて命にかかわった人はいませんでした。それでも、被災地(沿岸部)ではインスリンが不足していました。1/3以上の人が、いつもよりインスリンを少なめに注射したり、いつもは受診しない近くの病院に行ってインスリンを出してもらっていました。
今後、南海トラフ地震や、水害などのさまざまな災害に備えるために、以下のような準備をしておきましょう。
- インスリンは余裕をもって出してもらおう(1週間は必ず、できれば1か月)
- インスリンはいろいろな所に分けて保管しよう
- インスリンやお薬手帳、血糖測定器はすぐ持ち出せるようにしておこう
- 出かけるときはインスリンを持っていこう
- 糖尿病をもつ子どもや家族のネットワークを大切にしよう
- 災害時のインスリンの打ち方や連絡方法について医師と相談しておこう
大災害時の血糖コントロールは、
重症低血糖や高血糖が起こらないようにしよう
大災害時は、
- インスリンの量(製品)が違う
- 食事の量・内容・時間が違う
- 運動量が違う
- 生活環境や生活リズムが違う
- 心と体のストレスが大きい
- 血糖の予測が難しい
- 血糖を調整することも難しい
まず、落ち着こう!
あるもので、工夫しよう
食べられなくても、必要なインスリンは打つ(ふだん1日に打つ量の半分位)
食べてから、食べた量に合わせてインスリンを打つ(カーボカウントが役に立つ!)
高すぎるときには超速効型インスリンを少しずつ追加する(シックデイの時と同じ)
血糖を高めに保つ150~200mg/dl
注射針が少ないときは、4~5回同じ針を使う(ほかの人とは、貸し借りしない)
アルコール綿で消毒しなくてもいい
主治医の先生にインスリンが出してもらえない状況だったら……
- 主治医の先生以外でもインスリンを出してもらえます。また、処方せん(薬を出してもらう必要な指示書)がなくても、お医者さんの許可を薬剤師さんに伝えればインスリンを出してもらうことができます。
- 災害のときは、ふだんの生活では当たり前に思っていることもなかなか考えられな くなるものです。
- ※インスリンをもらえる場所を具体的に考えておきましょう
- ※可能であれば、学校に予備のインスリンを置かせてもらいましょう
病院に、いつも使っているインスリンがないときは?
いつもとちがう病院では、いつも使っているインスリンがないこともあります。そのような時は、同じような効果のあるインスリンを出してもらいます。
| 超速効型インスリンのなかま | ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ |
| 速効型インスリンのなかま(超速効型インスリンがないとき、代わりに使える) | ノボリンR、ヒューマリンR |
| 中間型インスリンのなかま(持効型インスリンがないとき、代わりに使える) | ノボリンN、ヒューマログN |
| 持効型インスリンのなかま | レベミル、ランタス、トレシーバ |
1週間分は備えておこう!
災害がおこっても、1週間程度のたくわえがあれば、あせることはありません。
災害をのりきるには、ふだんからの備えと周囲から助けを借りることが大事です。
非常持ち出し物品をまとめておく
- インスリン:ペン型注入器
- 注射針/ポンプのセットと予備の電池
- グルカゴン注射(バクスミー点鼻薬)
- 糖尿病カード
- お薬手帳・保険証
- 補食(ブドウ糖、砂糖、クッキーなど)
- ペットボトルの水
- 血糖測定器
- 穿刺針・穿刺器・チップ
- アルコール綿
- 使用済み針入れ
- メモ帳と筆記具
など
- ※インスリンを分けて保管しておきましょう
- ※災害時の対策を家族で話し合っておきましょう
周りの人との助け合い
頼れそうな周囲の人に病気のことを説明して、早めに助けを求めよう
糖尿病をもつ子どもや家族と互いに助け合おう
周りの人との助け合い
病院や保健所などに相談しよう